2017年06月21日

新刊紹介(18)

Studies in Middle and Modern English: Historical Variation (開拓社, 2017年6月)

谷 明信(兵庫教育大学教授)

 2011年8月に大阪で開催した Middle and Modern English Corpus Linguistics Conference の論文集の第二巻目、Studies in Middle and Modern English: Historical Variation (edited by Akinobu Tani & Jennifer Smith) が開拓社から発刊されました。全 vii+142ページで、税別3800円です。18世紀の英語から中英語の、形態論、統語論、語用論、文体論の問題を取り扱う6編の論文を含んでいます。目次は以下の通りです。

Editors and Contributors   vii
Introduction (Akinobu Tani & Jennifer Smith)    1
Some Considerations of Affixal Negation in Shakespeare (Hiroshi Yonekura)   5
The Development of a New Infinitival Construction in Late Middle English: The Passive Infinitive after Suffer (Mayumi Sawada)    27
Functional and Semantic Constraints on Forms of the Verb Phrase in Late Middle English If--Clauses (Namiko Kikusawa)   49
Think and Trow in the Paston Letters (Naoki Hirayama)   71
Chaucer's Comment Clauses with Reference to Trowe and Wene (Yoshiyuki Nakao)   91
Properties of English Prose in the Eighteenth Century (Kazuho Mizuno)   119
Index    139

 Yonekura 論文は、Shakespeareの全作品に生起する否定接頭辞 dis-, in-, un- の競合を検討し、その使用要因を解明し、Shakespeare の新語形成の一端を明らかにしています。Sawada 論文は Chaucer での特に suffer の補文での、定型節補文と不定詞補文の競合と、不定詞補文の拡大の過程を明らかにしています。Kikusawa 論文は ICAMET 散文コーパスを用い、後期中英語での if 節内での直説法・叙想法・法助動詞の競合をジャンルの問題と絡めて扱い、ジャンルによる3つの動詞の形態の異なる分布を明らかにしています。Hirayama 論文は Paston Letters のEETS 2巻をコーパスとして用い、think-trow を含む epistemic clause の文法化による文法的まとまり、主観化をそれぞれの動詞について、詳細に解明しています。Nakao 論文は Chaucer における trow-wene を含む comment clauseにおける epistemicity の度合いを解明し、また、多義的な二動詞で epistemic な意味でどの程度、使用されているのかも明らかにしています。Mizuno 論文は、The Century of Prose Corpus を利用して18世紀散文を対象に、Biber & Finegan の multi-dimensional analysis の枠組みで、18世紀前半と後半での文体の違い、ならびに、Dr. Johnson や Addison らの個々人の文体の相違を計量的に明らかにしています。
 後期中英語・後期近代英語を対象にしているとは言え、本書で論じられている問題は全て現代英語に直結する問題です。たとえば、Mizuno 論文で論じられている文体の口語化は現代まで続いていますし、Sawada 論文の不定詞補文の拡大も現代にまで継続しています。このように、本書は英語歴史言語学を専攻とする研究者だけでなく、現代英語の研究者にとっても有用な書であると確信いたします。ご高覧賜れれば幸いです。

posted by The Japanese Association for Studies in the History of the English Language at 00:00| 新刊紹介

2016年10月01日

新刊紹介(17)

田島松二(著)『中英語の統語法と文体』(南雲堂、2016年5月刊、293頁)

衛藤安治(福島大学名誉教授)

 本書は14篇の論考を収録しており、全体としては3部構成になっている。
 第1章(第I部)「古・中英語テキストにおけるトリヴィア研究のすすめ」で著者が「トリヴィア」と謙遜しておられるのは、「訓詁注釈」のことである。「訓詁注釈」は文献学の精華であり文学研究の基礎となるべきものであるが、第I部に収録された論考(第2章、第3章、第4章)は、いずれも注釈のあるべき姿を具現している。
 著者は1985年、同じく南雲堂から英文著書 The Syntactic Development of the Gerund in Middle English を出版している。新著第II部の第6章「中英語における動名詞の発達に関する諸問題」では、動名詞研究のポイントを85年刊の旧著に言及しつつ解説している。旧著が30年という時の経過にもかかわらず、動名詞研究の金字塔として今もなお揺るぎなき地位を占めていることをこの第6章で確認することができる。旧著刊行後も「種々のMEテキストを読み続けており、これまで精読したものは優に300点を超える」と著者はさりげなく脚注で述べている (第6章、p. 74. 注10)。天才的読解力に加えて、明確な目的意識と強靱な意志がなければ、とうてい成し遂げることのできない偉業である。
 著者の研究に見られる一貫した姿勢は、テキストの精読によって知り得た言語事実を証拠として論を展開していくことである。本書は「テキストを読む」ことの文献学的意義を今あらためて我々に思い起こさせてくれる貴重な文献であるといえよう。

 本書の目次は次の通り。

  はしがき
I 本文研究
 1 古・中英語テキストにおけるトリヴィア研究のすすめ 11 
 2 The Canterbury Tales: General Prologue, line 521 をめぐって 17 
 3 Piers Plowman B. V. 379 に関する統語ノート 27   
 4 中英語頭韻詩 Pearl, line 446 について 35   

II 統語法研究
 5 新しい中英語統語論−Olga Fischer, ‘Syntax’ (The Cambridge History of the English Language, Vol. II)
   をめぐって 47 
 6 中英語における動名詞の発達に関する諸問題 65
 7 後期中英語における法助動詞 Ought の発達−特に Chaucer の用法に関連して 91
 8 中英語における ‘one the best (man)’ 型構文 117 
 9 中英語における ‘take one’s leave of/ at’ について 145 
10 中英語における形容詞 ‘worthy’ の統語法 163 

III 頭韻詩の言語と文体
11 中英語頭韻詩の言語・文体とAuthorship−−Gawain 詩群を中心に 191
12 中英語頭韻詩における迂言的助動詞 gan(con)−Gawain 詩群の authorshipに関連して 211 
13 Gawain 詩群における中性人称代名詞 Hit 221
14 Gawain 詩群における絶対形容詞 243

参考文献 269
初出一覧 293
posted by The Japanese Association for Studies in the History of the English Language at 09:17| 新刊紹介

2016年09月03日

新刊紹介(16)

佐藤 勝(著)『英語準動詞・節の実証通時研究−−英語聖書四福音書を言語資料として−−』(英宝社、2016年9月刊、xii+188頁)

佐藤 勝(日本大学理工学部)

 この度、自己の研究の集大成とも言える書を上梓しました。2006年の拙著『英語不定詞の通時的研究−−英語聖書四福音書を言語資料として−−』(英宝社)に続くものです。章立ては以下のようになっています。関心をもたれた方は、読んでいただけましたらと思います。

第1章 導 入
第2章 英語聖書における外国語の影響
第3章 主語機能の不定詞・節の実証通時研究
第4章 後位修飾語句の実証通時研究
第5章 分詞構文・副詞節の実証通時研究
第6章 「目的」を表す不定詞・節の実証通時研究
第7章 動詞補文の実証通時研究に際して
第8章 「S + Vt + 準動詞・節」の実証通時研究
第9章 不定詞とは異なる動名詞特有の発達
第10章 「S + V + O + 準動詞/S + V (+O) + 節」の実証通時研究
第11章 要約・結論
*「はしがき」「略語」「注意点」;各節;「参考文献」「索引」;「著者紹介」を省略
*第3-6, 8, 10章の章末では、すべての準動詞・節(伝章節)を提示してあります。
posted by The Japanese Association for Studies in the History of the English Language at 08:58| 新刊紹介